残りの授業が終わり家に帰ると、部屋へ直行し携帯と共にベッドへ飛び込んだ。

「どうすっかなあ……」

私は携帯の画面を眺めて呟いた。画面に浮かぶのは、『連絡先』の中の芹沢くんの名前。

画面を眺めながら、交換してから5日くらい経つのかな、なんて考えた。未だに、連絡はしようとは思ったけど行動には移せていない。

芹沢くんの名前を眺めて、電話を掛けるか本気で悩むのは、今日で2度目。だけど昨日と同じように話題が浮かばない。

今日覚えていることと言えば、5時間目の小嶋との出来事くらいだ。しかしそれを話したところで、次の話題は見つかるだろうか。

実際に自分たちが話している様子を想像してみても、5時間目の話題が終わったら沈黙しか流れない。普段は後先考えずに行動するのに、なぜこういうときはそうできないのだろうか。

もしもここに、私と同じように後先考えずに行動する咲菜がいたら、無理にでも掛けさせるんだろうなと思いながらホーム画面に戻り、電話を掛けるのは諦めた。

携帯を持った右手の甲を額にのせて天井を眺めていたら、また違った咲菜との光景も浮かんだ。

もしかしたら咲菜は、私が画面を眺めている間に勝手に電話のマークに触れるかもしれない。