芹沢くんに先に教室に戻ると残し、私に優しい表情で会釈すると、大野くんは静かに階段を上っていった。

大野くんもまた綺麗な顔してるな、と思いながらその後ろ姿を見送り、芹沢くんを見た。

どいつもこいつも綺麗な顔してるな、と思う。なんの特徴もない私はどうしたらいいのだろう。心の中でため息をつくと、芹沢くんから話題を提供してくれた。

「2組、次なに?」

「ああ……社会。地理。3組は?」

「こっちは理科」

化学と付け加えられ、つい「うわあ……」と嫌な顔をしてしまった。

「超つまんないね」

化学担当のあの先生は、本当にどこまでも面白くない。見た目はかなり普通で、話は教科書をそのまま読んでいるような感じ。私の中で、一番眠くなる授業だ。

でも私たち2組の次は、小嶋が担当の地理。小嶋だから堂々と寝ることができるし得意な教科だしで、次の授業がほんの少しだけ楽しみに感じられた。

その瞬間、まるで“それならば”とでも言うように、昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。45分がこんなにも短く感じるようになったのは、高校に上がってからだ。

「早いな」という芹沢くんの言葉に「本当」と頷き、2人で教室に戻った。