校門を出て本屋さんへ向かおうとした私を引き止めたのは、私をそこへ向かおうとさせたのと同じ、小嶋に仕事を頼まれたことだった。

小嶋に仕事を頼まれたことを美咲ちゃんに愚痴ろうと思ったのだけど、美咲ちゃんとは話し出したら止まらなくなる。

学校を出たのも遅いのに、それから本屋さんに寄って長話なんてしたら家に着くのはとんでもなく遅くなる。

お母さんが怒るということは簡単に予想がついた。大人しく家に帰れば、待っているのは宿題との格闘。それを続けていれば時間が経つのは早く。

いつも通りの朝を迎え、いつものように睡魔くんと闘いながら学校での半日を過ごした。


私は今日も、芹沢くんと話そうと1階の廊下を歩いている。

今日は、少しの間 掲示物の貼られた壁の前で待っていたけど会えなかった。あの掲示物はもう何度も見ている。

さすがに飽きてきて、とりあえず他のところへ行こうと歩き出したところだ。


ふと頭に浮かんだ男性アイドルの歌を口ずさみながら歩いていると、自分と同じようなワイシャツとぶつかりそうになった。

「あっ、すみません」と言った声が相手と重なり、顔を上げれば芹沢くんの顔が現れた。

なんだお前かといった安心に満ちた雰囲気でお互いの名前を呼び、人が来る気配はないのでその場で話すことにした。