眠気のせいで内容が頭に入ってくることはなかったものの、なんとか乗り切った午後の授業。

自転車置き場で綾美と話し、家に帰ってしまえば時間が経つのは早く。

騒がしい天敵の音に起こされ登校し、睡眠を求め続ける体で半日も睡魔くんと闘い抜いた。

昼休みである今、私は1階の廊下にいた。

綾美には昨日も先ほども、「こんな暑い中どこ行ってんの?」と言われた。

それに、「ちょっとねっ」と下手くそなウインクを返してきた。


「あ、笠原」

頭に浮かんだ少し古い歌を口ずさむ私の声が止んだのは、芹沢くんのその声が聞こえてからだった。

「芹沢くん」

少し先に芹沢くんの姿を見つけると、自然と笑顔になった。毎日きて芹沢くんに会えることを期待するなんて、少し前の踊り場みたいだと思った。