「芹沢くんは? やっぱり宿題は早めに終わらせる派?」

「まあ、笠原よりはたぶん」

「じゃなきゃまずいよ」

私より遅いくらいでは、夏休み中に宿題は終わらない。最終日に命懸けで終わらせる私より、遅いくらいでは。

そういえば綾美はいつ頃終わらせたんだろう、と少し気になった頃、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

「はあ。本当早いよね、勉強以外の時間は」

ため息以外聞こえないのではないかというくらいの声で呟くと、「そうだな」と芹沢くんは共感してくれた。

「あと2時間か……」

次は誰の授業だったかと考えながら肩を落とす。先生によっては授業中に眠ることすら許されない。食後の授業以上に効果のある睡眠用BGMはないというのにだ。


「とりあえず戻るか」という芹沢くんの声で、気が向かないまま近くの東階段を上り始めた。

「まあ、午後って眠くなるよな」

「えっ、芹沢くんも?」

隣で階段を上る芹沢くんを見る。

「もう……気づいたら授業終わってるな」

少し恥ずかしそうに笑う芹沢くんに、「漫画みたいだね」と笑えば、「本当だな」と芹沢くんも笑った。


東階段から2階に上がると、そこから教室までは少し遠く感じた。

私たちの2組や3組の教室は、中央階段から上がればそれから廊下はほとんど歩かないで教室に着く。しかし今上ってきた東階段のすぐのところは、5組以降の教室が近い。

ちなみにもう1つの階段、西階段の近くは、1階には職員室が、5階には資料室があるけど、2階から4階は教室もなにもない。大きな窓が並ぶだけの無駄な空間だ。


しばらく廊下を歩き3組の教室の前に着くと、「じゃあ」と言われたので、「またね」と軽く手を振って芹沢くんと別れた。