想い舞う頃〜最初で最後の恋〜


「はい、それで――」

先生の感情のない声と、チョークが黒板に当たる音だけが響く教室内。

ほとんどの生徒が真面目に授業を受けている中、上手にペンを回す方が数名に、寝ていることをアピールするかのように教科書に隠れながら机に伏せる方が数名。

良くも悪くも、この教室内に緊張感は一切ない。

ただ、時は午前最後の授業。私の空腹はかなり前からピークに達している。その頃から、頭の中は勉強内容ではなく今朝お弁当になにを詰めたかでいっぱいになっている。

早くなにかを食べてくれと叫び出しそうなお腹を抱えながら窓の外を眺め、しばらくしたらシャーペンを握った右手を動かす。


そういえば、これは小学校高学年くらいからの授業の受け方だった。晴れた日は、ほんの少しずつ動く雲を目で追うのが密かな楽しみ。雨の日は、落ちてくる雨粒をひたすら追う。

授業の時間ほとんどを外を眺めているから、退屈はしない。

ただ、今のような時間――3〜4時間目は空腹に耐えるのが辛い。こんなに静かな教室では、お腹が叫べば間違いなくバレてしまう。

今にも叫び出しそうなお腹を抱え、教室の時計に目をやった。授業終了まで、あと5分ちょっと。

心の中でため息をつき、ちらりと綾美の席を見てみた。綾美はいろいろな角度から自分の爪を見ている。

少しすると目が合い、お互い周りに気づかれない程度に笑みを浮かべた。