咲菜なら来てくれるかもしれないと思い、遊びの誘いの文章を打ったけど、友達の誘いを嘘をついて断った上にそんなことはできなかった。
咲菜へのメールを破棄し、画面を切って携帯をテーブルの下に置く。
無駄に静かなこの場所で大量の宿題と向き合える自信はなく、すでに音楽プレーヤーに繋がっているイヤホンを耳にさした。
プレーヤーの再生ボタンを押して聴こえてきたのは、大好きな女性アーティストのデビュー曲。
聴き慣れたイントロを聴きながら、得意な社会のノートと問題集を開いた。
いつもならこの、問題集に書かれた大量の文字やイラストを見た時点でやる気をなくすけど、落ち着いた女性アーティストの声が聴こえている今は大丈夫。
時々リズムに乗りながら、真っ白なノートの最初のページを汚していく。
得意な教科はどこまでも得意な私。やる気になれば、ノートはどんどん黒く染まっていった。



