綾美には悪いことをしてしまったし、私も宿題をやろうかなと思い、昨日や一昨日 綾美の家に持って行ったバッグから宿題を出し、テーブルに広げた。
多すぎてなにから手を付けたらいいかわからない。
あえて苦手な英語からいくか、得意な社会か。それとも内容によっては得意な理科からいくか。私は唸りながらテーブルに広げた宿題の上に伏せた。決まる気がしない。選択肢が多すぎる。
ノートが嫌なら原稿用紙にするか。いや、それが一番嫌だ。
「ううっ……」
綾美の誘い、受けるべきだったのだろうか。少し後悔しながら床に寝転んだ。天井を眺めながら、宿題がなければ全然このままでいいのにと思う。
なにも考えず家でごろごろ。最高の過ごし方じゃないか。大人は、宿題を終わらせてからごろごろすればいいとか言うんだろうけど。
できるならばとっくにそうしている。私の勉強にはナビが必要なんだ。それも、いちから丁寧に教えてくれる、親切なナビだ。
テーブルの上でノートに埋もれている携帯を取り、誰の連絡先があるか、上から順に見ていった。スクロールする指が止まったのは『ふ』の辺りだった。
目に入ったのは、『藤井 咲菜』の4文字。



