綾美は今日も、外がオレンジ色になるまで2人の話をした。ほとんど聞き流すような感じで、どんなことを言っていたかはあまり覚えていない。
どうせ、2人が教室を緊張で満たしたとか、授業の途中で帰ったとかいう話だろう。綾美から聞く2人の話は、いつも同じ感じだ。
あまりに退屈で、この私が宿題をやりたいとすら思った。
家に帰ると、私は部屋へ直行した。
「おかえり」と言ってくれたお母さんに、「部屋にいるからご飯できたら呼んで」と伝えると、「呼ぶ前に嗅ぎつけてくるでしょ」と言われた。
「否定はしないかな」と笑い返して階段を上り、部屋に着くとバッグを床に放ってベッドに飛び込んだ。
仰向けになり、額に手をのせて天井を眺める。そろそろ宿題も真面目にやらなきゃな、という自分の考えに、でもわかんないしと自分で言い訳をする。
この調子で夏休みのほとんどを過ごし、最後の1〜2週間でなんとか終わらせる、というのが私の夏休みだ。最初のうちに宿題を終わらせることができた夏休みなんて、5本指でも余ってしまうくらいだ。
「はあ……」
静かな部屋に響く、ほぼ無意識に漏れた ため息。また明日も、綾美から連絡がくるのだろうか。
綾美のことは嫌いじゃないし、一緒にいて楽しいし、誘われるのは嬉しい。
だけど、明日も2人の話を聞くのかと思って少し憂鬱に感じているのは気のせいじゃない。



