「椎に触るな!」

グイッとそのまま後ろに引っ張られた私の体。

ゼイゼイと肩で息をしながら、立っているのは臣。

触られたところから震えがくる。

『触らっないでっ…!』

声まで震える。

すぐ悲しそうに私を見たけれど、

「イヤだ。オレ以外に触らせないで!」

『何言って…。臣は自分から友達の彼女に触ったんでしょ?!自分のしたことわかってて、私にそんなこと言ってるのっ?自分勝手にも程がある!離して!』

ブンブン腕をふってみるけど、全くふりほどけない。

震えが止まらないから、うまく力も入らない。

「私の友達に何しとんじゃーっ!」

目の前にいた臣が消えた。

飛び蹴りかました杏。

そう、杏ちゃんは元ヤンです。

中高とヤンチャな時代があったそうです。

なんだか一気に震えが止まりました。

「お前こそ触んじゃねぇよっ!お前が触れたのは昨日の夕方までだよっ!友達の軽いバカ女に手ぇ出して、何一人前に独占欲見せてんだよ。椎をバカにするな。椎は軽くないし、お前にとってはもう元カノなんだよっ!消えろ。」

…若かりし頃に戻ってしまったようです…。

しれっと市瀬くんの元カノさんのこともディスってましたね。

でも、なんかすっきりしたかも。

杏がいてくれてよかった。

「椎っ!」