幾度も村の伝承に出てくる『人狼』が存在する可能性がある、とわかった次の日。村長は村人を村の中央広場に集めた。

不穏な雰囲気の中、人が集まると決まって起こるのはー

「人狼が村を襲った」
「彼奴等は村を滅ぼす気だ!」
「人狼は、本当に痛んだ」
「人狼を殺せ!」

自らの身を蝕む恐怖の感情から必死に目を背けようと、叫ぶ。



そのうち村人同士疑心暗鬼になって収集がよりつかなくなるのは目に見えている。
一度、落ち着かせるべきかな。そう思った瞬間
「ゴンっ」
と、石畳に打ち付けられた杖の大きな音がした。

「ええい、静かにせんかっ!」
音の発生源は村長からだった。村人の視線を力ずくで集めることに成功した。けれど、静寂が訪れたのは一瞬。村人たちはターゲットを村長に定めまた喚き始めた。

「村長、我々を集めてどうするつもりだっ?!」
「まさか、村長は人狼なのか?!」
「違うわいっ!わしはれっきとした『村長』じゃ!話を聞け!」
憤怒に染まったような顔で、叫ぶ村長。
その言葉に村人たちは幾分か冷静を取り戻した。
「村長、村寄合によって『人狼ゲーム』の開催を決定したと聞いた。詳しい説明を求む」
「うむ。人狼ゲームとは村人から人狼を炙り出し、殺すためのものじゃ。毎日昼に、話し合って怪しいものを1人決め処刑。人狼を皆殺しにするまで続くゲームじゃ」
「それじゃあ、無実の人も処刑されちゃうんじゃ…?」
「なんの犠牲もなしに人狼を皆殺しにできる、など甘いことを考えられる状況じゃなかろう」

非情だが合理的。それが『人狼ゲーム』。

みのりは人知れず嘆息した。
この村には、人狼が2人いる。そして、人狼の因子を持つものー所謂裏切り者が1人。その3人でこの理不尽なゲームに抗わなくてはならない。

でも
(ハードモードだろうと、死ぬわけにはいかない)

脳裏に映るはかつて、別れた友。
約束を、破らない。私は誇り高き人狼なのだから。