「今、役職言ってないやつって誰だ?」
佐藤レオン、よく言えば男らしい。悪く言えばガサツな青春野郎だ。
その佐藤レオンの問いに答えるのは小島奈々。先程占い師を主張した青春野郎の片割れ。
「稲葉さん親娘と綾辻さんと田中さんと若山さん。あと、あなた。」
「結構多いな」
「この段階で迂闊に約定を口に出せない。当然と言えば当然」
「まあそうだな。ただ、こうなった以上仕方がないかもしれないが冤罪をかぶせてしまう確率が上がるな」

シン、と広場が静まる。
冤罪。身は潔白なのにも関わらず人狼と判断され殺されること。誰もが避けたいと思う、けれど避けることはほぼ不可能。

日はすでに傾きかけ、もう夜まで間もないことを示している。
長い影に目を落とし、皆一様に俯く。

死にたくない、殺したくない。でも殺さずにはいられない。良識と、恐怖と、自己保身と。葛藤せずにはいられない。






やがて、日は沈み、僅かな残滓と月明かりに照らされる。

「投票の時間だ」

ー何もわからない、誰が本物で誰が嘘つきか。死の押し付け合いが始まる。