「では、皆様の役職をお伺いしましょうか。」
田中麗奈の発言で、広場が静まり返った。みんな自分の役職を言うべきか迷っているんだろう。発言次第では殺されかけない。
私もそうだ。殺されるのが怖い。18年間ずっと一緒に暮らしてきた村人たちに疑われるのが怖い。でも、私は生きなくてはいけない理由がある。ここで死ぬわけにはいかないんだ。

あの約束を果たさなければいけない。
小さな、大きな約束を私は果たさなきゃいけない。

覚悟は決まった。もう、やるしかないんだ。

「私は狼つき。占っても人狼って出るけど。」

その発言を機に、みんなが次々言い出した。
でも、他に狼つきを名乗り出る人はいない。私は嘘をついているわけだから、対抗が出るはず。もしいないなら亡くなった可能性は高い、すなわち内山の役職。

「私、小島奈々は占い師。騎士かコスプレイヤーは私のことを守ってほしい。昨日は綾辻夢を占った。結果は人間。白だと思う。」
「分かったよ。僕は、コスプレイヤーだよ。だから、騎士は僕のことを守ってくれないかな?あ、ここで騎士は名乗り出ないほうがいいと思うよ。殺されちゃったら後が困るからね。」
山辺さん、息を吐くように嘘をついたな。自分が守られたら、ターゲットが殺せる可能性は上がる。山辺さんは、やっぱり頭がいい。それにコスプレイヤーは狼つき同様占われた時の回避がしやすい。

「あのっ、ちょっと待ってください。」
可愛らしい声が、広場に響いた。
「どうしたの?町さん?」

それは、かわいい上に頭がいい。おまけに運動神経もいいと評判の町こころだった。

「あの、私がコスプレイヤーなんですっ。山辺さんは嘘をついていると思いますっ。」

必死にまくし立てる町さん。
山辺さんが嘘をついているからおそらく本物。

「なんとも言えないわね。判断材料が少なすぎて本物がわからないわ。一旦コスプレイヤーは放置しておいた方がいいと思うわ」
綾辻さんが1日目に山辺さんが殺されるという最悪のルートを回避にかかる。
「放置ということはつまり、どちらも殺さないでおくということでよろしいですか?」
と若山さん。常に丁寧に話すのが特徴だ。
「ええ、そうよ。ここで同じ陣営は揉めないと思うからどちらか一方が人狼と見ていい。それならば、あと2人。もう1人の人狼と、裏切り者でしたっけ?」
「ああ、そうじゃ。裏切り者が殺されていなければの話じゃがな。」
「そっちを先に削りましょう」

会話の主導権を握っているのは人狼陣営。このままうまく行くことを、切に願う。