「遅くなってごめん、ごめんな」


俺は泪の頭を撫でながら、声をかける。


もう……たくさんの人に好かれなくてもいい。

カッコイイって言われるのは、たったひとりでいい。



「なぁ……泪、俺の声、聞こえてるか?」



泪、アンタにだけ俺を見ててほしい。

だから、目が覚めたら聞いてほしいことがある。



「俺をこんな気持ちにさせるのは、アンタだけだよ」



泪の長いまつ毛がフルフルと揺れる。

きっと、もうじき目を開けて、俺のことを見つめてくれるんだろう。


その時間を待ち遠しく、その時間さえ愛しいと思う。

そんなクサイことを俺に言わせるアンタは……。



「すげー女だよ」



そんで、アンタがすげーヤツだって気付かされる度に募る。

アンタのことが……好きで堪らないってさ。



「だから早く目……覚ませよな、泪」