「なんだ、やっと気づいたの」
「だって、こんな風に誰かを好きになるなんて思わなかったんだよ」
"恋はするものじゃなくて落ちるものだ"
そんな言葉を作った誰かさんはすごい。
それを、俺は身をもって知ったから。
「気付いたらあいつの声が聞きたくて、会いたくて、いつも姿を探してんだ……」
こんなふうに、たったひとりに好かれたいって思ったのは初めてだった。
男なら、モテたいと思うのが性だろ?
追われるのが憧れ、カッコイイなんて思ってた。
そんな俺の恋愛スタンスを覆すほどの衝撃。
「やっと今日会えるはずだったんだ……なのに、色んな障害に邪魔されて……」
「八雲が招いた障害だけどね」
「あぁ〜っ、自業自得だって分かってんだよ!だから落ち込んでるわけ、はぁぁ〜」
バカで節操が無いと自己嫌悪に陥りそうだ。
俺は項垂れるように机に突っ伏す。
「でもまぁ……そう想える誰かを見つけたっていうのはいいことじゃない?」
「んー?」
そう想える誰か……か。
パタンッと読んでいた本を閉じて言った雪人を見る。
俺を、こんなにも不安にさせて、弱くなったみたいに不安でたまらなくなる。
なのに、そんな不安を上回るほどに……愛しい。
「これで八雲も、ようやくチャラ男卒業なわけだ」
「チャラ男言うな!!」
今、チャラ男って言葉に敏感なんだからな!!
俺は無意識にネクタイをキュッと締める。
俺は、これから真面目男子に生まれ変わるだっつーの。
「昼休みに神崎さんのところへ行けば?」
「あ、あぁ!!すぐに行く!」
雪人の言う通りだな。
次は昼だ、昼休みにもう一度保健室に行ってみよう。
そんで今度こそ、泪と会うんだ。


