「おー可愛いよ、カラオケは今日パスな、うん、似合ってる……けど、悪いけど通してくれね?」



適当に返事を返して、前に立ちはだかる女の子たちの間を突っ切ろうとすると……。



「やーくもっ、環奈ぁ、さっき学校来る途中で転んじゃったの。お願い、おんぶしてぇ〜」


今度は、うちのクラスのぶりっ子、環奈が現れた。



おい……頼むよ、俺マジで急いでんのに!!

心の中で発狂しながら、俺は笑顔を作ろう。

女の子を無下にできないこの性格が憎い。



「転んだって………」


環奈の膝を見ると、たしかに擦り傷がある。



これは……無視できねーな。

こんな時に良心に逆らえない俺……。


くそっ、ごめんな泪!!

環奈をクラスに送って、すぐに保健室に行けばいいか。



「仕方ねぇーな環奈、乗れよ」


「きゃーっ、さすが八雲っ!」



ぐっ、耳元で騒ぐなって。

耳がすげぇ、キーンとするだろ。


環奈の前でしゃがむと、俺は環奈を背負いクラスまでダッシュした。