「わっ……まずいっ、倒れるっ!!」


「えっ……あ、ちょっと君!!」


倒れかけた私の腕を、目の前の人に掴まれた。

それでなんとか転倒を避けられ、ホッと息をつく。



「たっ、助かった……」


「だ、大丈夫??」


「はい、本当にすみません……」


まだボーッとする頭であたしは地面に落ちたスマートフォンをポケットにしまうと、助けてくれた張本人を見上げる。


すると、最初にアッシュがかったブラウンの髪が視界を過ぎった。

そして、その向こうにあるスッとした鼻筋にシャープな輪郭、キリッとした目元。

耳元にはシルバーのピアスがついている。


あ、この人……同じクラスのチャラ男。

確か……難波 八雲(なんば やくも)だ。


助けてもらっといてなんだけど……。

あんまり女癖良くないとかなんとか……。