でも、今回のことで分かったことがある。

俺はどうやら……。



「あんたの事が自分の命より大事みたいだ。そんくらい、泪の事が好きなんだな」


何度も気付かされる。

アンタの屈託ない笑顔に、その涙に触れる度、こうして失いかけた時に、これでもかってほど。


ここまで、深く誰かを好きになったことは無かった。




「アンタと一緒にいると、いつも見てたはずの世界が、特別輝いて見えんの、すごくねー?」


眠る泪に笑いながら声をかける。

目から収まりきらない涙が、泪の頬に落ちた。


「アンタの事を想うと、泣けてくる」


誰かのために、泣いたことなんてあったか?

いや、泪が初めてだ、きっと。


「この温もりを……失わなくて良かったって、思うよ」


泪がいなくなったら、俺の世界はまた彩を失うだろう。

いや、それどころかモノクロだな。

アンタがいなきゃ、もう俺は生きてけねーと思う。



「早く、泪の笑った顔が見たい……声が、聞きてーよ」


その顔の横に手をつくと、俺はそっと泪の閉じきった瞼に唇を寄せた。

なぁ、アンタが悪い魔法にかけられた白雪姫なら。

毒りんごを食べて眠ってしまったのだとしたら。