《side 泪》


カフェでみんなと別れた日の夜。

あたしはベッドに腰掛けてスマートフォンを手に握りしめていた。



「八雲に、電話しよう」


それで、明日会いたいって言わなきゃ。

話したいことがあるんだって。

こうやってスマートフォンを手に持ち、八雲の名前を電話帳から出すまでに何時間もかかった。



「本当は、帰ってきてすぐに連絡しようと思ったんだよ?」


だけど、着替えとか、夕飯とか、お風呂とか……先に済ませた方がいいかなって。

その……長電話になったら困るし。



「なんて、全部言い訳かぁ……」


そうやって、先伸ばしにしようとしたんだ。

なんか、緊張しちゃって。

電話なんて、ほとんど毎日してたのに……。

今更、八雲との電話にビクビクするとか、変だよね。


「泪、何ひとりで喋ってるんだ?」


すると、透お兄ちゃんが扉越しに声をかけてきた。

やだ、あたし声でかかったかな。

時刻は21時半、早寝早起きのお兄ちゃんからすれば、あたしは騒音おば……妹だ。