「ごめん、八雲……」
「泪……なら、勝手に守ることにする」
「え……」
てっきり、それなら勝手にしろって、言われるかと思った。
なのに、八雲はあたしから離れるどころか、守るなんて言うの?
驚いて顔を上げれば、八雲は寂しそうに笑っていた。
「やく……も……」
「泪が抱えてるもん、俺にも分けて欲しい。でも、俺には今、その資格が無いから……」
胸が……締め付けられて、今すぐこの人を抱きしめたい衝動に駆られる。
そんな顔をしないで、八雲のせいじゃないよって。
あたしが、弱虫なだけなのにって……。
そう伝えたいのに、何も言えなかったのは……。
八雲との距離をこれ以上縮めることが、やっぱり怖かったからなんだと思う。
「泪に信じてもらえるように頑張ることにするわ。泪がもう一度俺を好きになってくれるように……」
まだ、八雲のことが好き。
だけど、それを伝えるに立ちはだかる過去の壁が高すぎて……。
あたしは、言葉が出なかった。