「俺は、泪のことがまだ好きなんだよ!!」



授業が始まる数分前なんだろう。

廊下には生徒はいなくて、八雲の声がよく響いた。


あたしのことがまだ好きって……。

それは本当のことなの?


「泪が俺の話を聞いてくれるまで、諦めない。簡単に、諦められる女の子じゃねーからっ」


「や、やめて……」


ねぇ、橋本さんとまだ続いてるんじゃなかったの?

だったら、どうしてそんなことを言うの。

ズキズキ、痛む胸をそっと手でおさえた。



「あたしは、もう……っ、傷つきたくないっ。あんな風に、苦しい思いをするのはたくさんっ」


「……泪……頼むから、俺をもう一度信じてくれ。俺が傷つけたのに、ごめん。それでも泪を、ひとりにしたくねーよ」


違う……八雲のせいだけじゃない。

あたしは、信じることも向き合うことも怖いんだよ。

自分が傷つきたくないからって、八雲の言葉からも逃げようとしてるだけなんだよっ。


そんな自分が、本当に大っ嫌い!!