《side泪》


「あ、おい泪!!」

「あたし、トイレ行ってくる」


次の授業までの10分休憩、あたしを見て席を立った八雲に合わせて、同じように席を立つ。


「泪、俺アンタに話がっ」

「…………」


八雲を無視して、スタスタと女子トイレへと逃げ込んだ。

八雲に別れを告げてから数日。

あれからあたしは八雲をことごとく避けた。


理由なんて一つだ。


「あたし……八雲に会うのが怖いんだ」


トイレの鏡の前、両手をついて酷く疲れた顔をした自分の顔を見つめる。


会えば、言葉を交わせば、未練たらしくきみに好きだって言ってしまいそうで……。

一方的に話も聞かずに逃げたことに、罪悪感もあった。


ただ、話を聞いたところで、あたしのことなんて好きじゃなかったなんて言われたら……。



「傷付くのは、怖い……っ」


中学の時、みんなから『怠け者』、『サボり』、『体力が無い』だの、責められた記憶が蘇る。


あんな風に、拒絶される痛みを……もう味わいたくないっ。