「分かった、なら行って八雲」

「泪……あぁ、絶対アンタのところに帰るし、安心して待ってろよ」


八雲は一度あたしのところへ戻ってくると、人目も気にせずに、額にキスをした。

それにドキドキしながら八雲を見上げれば、ニッと笑われる。


「行ってくるな」

「行ってらっしゃい」



橋本さんと教室を出ていく八雲の背中を見送る。

大丈夫……信じてるから、大丈夫。

両手をギュッと握りしめて自分に言い聞かせるように心の中で何度もそう唱えた。



「ちょっと、何してんの追いかけるよ!」

「え、え??」


環奈!?

環奈にむんずと腕を握られた。

それに驚いてると、環奈はあたしを怒ったように振り返る。


「泪、正気!?普通、ほかの女と彼氏をふたりきりにとかしないから!!」

「で、でも……」

「でももへったくれもない!!あたしたちの八雲があのビッチ女に奪われてもいいの!?」


興奮している環奈にあたしは圧倒される。

こういう時、あたしも素直に行かないでと言えたら良かったんだろうけど……。


でも、あたしと一緒にいるために八雲が決断したことなら、どんな事でも信じてあげたい。