「とにかく、ふたりとも少し落ち着きなさい。そろそろ、丘まで上がる坂なのに、疲れちゃうわよ」
そんな平行線の喧嘩を止めてくれたのは、三枝さんだった。
あたしたちは同時に視線を逸らして、一歩だけ離れた。
「めんどくさい女、こんなのやめて環奈にすればいいのに〜」
「っ……めんどくさい……」
環奈ちゃんの言葉に、胸が痛くなる。
確かにあたし、めんどくさいかも。
もう、八雲に嫌われちゃったかな……。
「行こ、八雲〜っ」
「あ、あぁ……」
環奈ちゃんに腕を引かれる八雲を、見送った。
すると、あたしの隣に三枝さんがやってくる。
「うまくいってないみたいね」
「バスの席譲ってくれたのにごめんね、三枝さん」
環奈ちゃんと三枝さん仲悪いのに。
それでも譲ってくれたのはあたし達のためだった。
それを、無下にしちゃったんだ……。
「そんなこといいわよ、ほら、あたしたちも行きましょ」
三枝さんに手を引かれて、あたしもトボトボと歩き出す。
……悲しい、痛い、苦しい。
恋って、幸せな気持ちだけじゃないんだね。
八雲、初めて知ったよ……。


