「女の子にはだらしなかったんだけど、こういう気の利かせ方は……尊敬してるよ、俺も」


「紫藤くん……」


紫藤くんは最初から分かってたのか、静かにドリンクバーのコーヒーに口をつけている。

紫藤くんがコーヒー飲んでると、なんか高級レストランにでもいるみたいに錯覚するな。

それほど、仕草が優雅で綺麗なんだよね。



「でも、いつもより張り切ってるところを見ると……理由の大半は、神崎さんのためなのかもね」


「あたしのため?」


「神崎さんがクラスに来たばっかなのに、今日の思い出が喧嘩で終わるなんて悲しいでしょう?だから、きっと……」




そこまで言われて、理解した。

八雲は、あたしに楽しい思い出を作ろうとしてくれたんだ。

あたしが……『どれも、大切な思い出になるんだから』なんて言ったからだ。


八雲は、いつだってあたしの言葉を、気持ちを大切に守ってくれてたから。