「ど、どうしよう八雲……」
「慌てるな、まぁ俺に任せとけ」
あわあわしていると、八雲がポンッとあたしの頭に手を乗せた。
そして、安心させるように笑うと、デンモクを手に取る。
「難波 八雲、歌います」
「……は?」
謎な行動に、あたしは可愛いの『か』の字も無い反応で八雲をポカーンとみてしまった。
八雲、一体なに考えてるの?
こんな時に、歌って正気の沙汰とは思えないよ!?
すると、すぐにこの場にそぐわない演歌のイントロが流れ始める。
「は!?八雲、演歌歌うのかよ!?」
中野くん、あたしもそうツッコミ入れるところだったよ。
なんで、八雲はこの選曲をしたの?
い、意味がわからない……。
「絶望が〜……山脈を登れば、明日はきっといい日になる〜」
しかも、八雲めちゃくちゃ上手い。
上手すぎて、しかも演歌で……だめだ、笑いがこみ上げてきちゃった。
「ぶっ……ふふっ、難波くんっておもしろいわよね」
「あははっ、八雲ってば超うける!!環奈ぁ、お腹痛いんだけどぉ!!」
あ……さっきギスギスしてた三枝さんも環奈ちゃんも、お腹押さえて笑ってる。
もしかして八雲、この場をなごませるために……?


