そして、みんなでやってきた駅前のカラオケ。
新しく出来たカラオケボックスらしく、中野くんがクーポン券を持っていて、室料30%OFFになった。
「デートより先にみんなでカラオケかよ……色気ねーな」
隣に座った八雲が悪態をつく。
「もう、そんなこと言わないの!あたしは八雲がいるなら、どこにいても、誰といてもすごく楽しいのに」
これは本心だ。
だって、好きな人と同じ場所、時間、気持ち……。
それを共有した一瞬一瞬が、八雲と過ごした思い出になるでしょ?
「どれも、大切な思い出になるんだから」
「……アンタって、時々すげー爆弾落としてくるよな」
「……え、爆弾??」
なにそれ、どういう意味??
首を傾げていると、八雲が自分の顔を片手で覆ってしまった。
「はぁぁー……頑張れ、俺の理性」
「神崎さん、そのバカは放っておきな。ちょっと、頭の中が花畑になっちゃってるだけだからね」
八雲の隣にいた紫藤くんが、顔を覗かせてあたしに声をかけてくる。
その顔は、誰がどうみてもキラキラの笑顔なんだけど……。
今……バカとか、頭が花畑とか……その笑顔にそぐわない言葉が聞こえたような?
あれ、やっぱり紫藤くんが腹黒い説……嘘じゃないかも。


