「ぜってーやだ、泪のこと自慢して歩きたいくらいだし、俺」
「うざ……でも、女の子はナイーブなんだから、少し気遣わないと」
あれ、今紫藤くんの口から怖い言葉が聞こえた気がした。
"うざい"なんて、……まさかね。
こんな綺麗で優しい王子様から、まさか……ね。
「だって、ぼんやりしてたら、泪かっさらわれそうなんだもんよ」
「えっと……八雲、まさかなんだけど……」
これは、俗に言うヤキモチ……というやつですか?
生まれてこの方、妬かれたことはないけども……。
でも、これは明らかに……。
「ヤキモチ??」
「してわりーか、鈍感女」
不貞腐れたように、赤い顔であたしを睨む。
でも、そんな八雲に胸がドキドキしてしまう。
「八雲みたいなモテ男が、あたしみたいな凡人に??」
「あのなぁ……いい加減、俺がどんだけアンタを好きなのか自覚しろって」
そんな、呆れたみたいな顔しなくても……。
だって、そりゃあ八雲みたいに顔もスタイルも良ければ別として、凡人のこの悩みが八雲にわかりますか?
「不安は、八雲を好きな限り消えないんだもん……」
「泪……」
「でも、そんな時は安心させてくれるんでしょう?」
大切にされてる自覚はあるよ。
それでも好きだからこそ不安だし、弱音も吐きたくなるの。
だから、その度に好きだって言って。
優しく抱きしめて欲しい。


