「はよー」

「ああ、おはよう。
っておい月星…」





朝、顔を合わすとすぐに怜央は首元を指し示して





「今日は襟のボタンとめとけよ」

「ん?あぁ…」





トイレの鏡で確認すると、首の横の部分にほんのりと紅い印が一点つけられていた。



教室に戻ると女子達は俺の変化をいち早く察知して





「月星くん何でボタンとめてるの?」





と聞いてくるのに対する





「ちょっと真面目になろうかと、ね?」





そんな俺の冗談をきっかけに





「普段は真面目なのに2人きりだと狼に…とかのギャップ萌え最高だよね!!」

「他の人は知らない私だけが知ってる顔…とかね!!」





周りの女子達は盛り上がっていた。





「そういうのもほどほどにしとけよ」

「何、怜央がそんなこと言うなんて珍しいな?」

「別に。最近の月星は変だから心配してるだけだ」





さも興味もないように言い放つけど本当は知ってる。



胸のあたりがもやもやして、やるせない気持ちになってるのを女で発散させてる、それに気付いてるんだろ?


気付きながらも黙って見守って、俺がしんどくなった時には助けてくれる。


宮野怜央という男は昔からそうだった。

だから今まで一緒にいられたのだ。




こんなの良くないことだって分かってる。

でも他にどうしたらいいか分かんねぇんだ…





「ヤバくなったらちゃんと引くから心配すんなよ」

「…そうか」





今はこう言うしかなかった。