「…さん…芹澤さん!」

「へぁ…はい!」





ヤバイ完全に意識飛んでた…





「あれ…皆は?」





教室を見回しても誰もいない。





「次の授業、家庭科で調理実習なので皆はもう行っちゃいましたよ」

「あ、そっか…」





そうだった。調理実習の準備で先に行ってしまった悠子にも言われてたんだった。





「じゃあ何で橋本くんが?」

「教室の戸締りは僕の仕事ですから」

「ご、ごめん!私、邪魔してたんだね…」





私がそう言うと、いやいや!と気を使ってくれたけど橋本くんには悪いことをしたな…





「あの…今日のっていうかさっきの授業から芹澤さん変です…よね。ずっと上の空っていうか…」





橋本くんは私の隣を歩きながら聞いてくる。





「え…そ、そうかな」

「それって、松下くんが関係してるんですか?」





私が驚いて橋本くんの方を向くとばちっと目が合った。





「な、何でちが…」

「さっき、うわ言で月星って呟いてるの聞いてしまって」





嘘…全くの無意識…





「で、でも違うの…!」

「あの…」





橋本くんは大きく深呼吸してから私の方を向き直し





「松下くんと何かあったんですよね?この話をすると芹澤さん凄い辛そうな顔をする。なのに何で嘘つくんですか、庇うようなことするんですか…!?
僕は、何の力にもなれないんですか…?」





一息で言い切る。いつもの温和な橋本くんとは違う剣幕で迫られて、私はその目を見ることが出来なかった。





「…ごめん、橋本くん」





そう言うだけで精一杯だった。


忘れようとしてもずっとずるずると引きずってて、1人で傷付いて周りに迷惑かけて。

こんな自分勝手なやつを、そんな真っ直ぐな目で見ないで…