「私…月星くんのお家に呼ばれちゃった」
頬をそめたクラスの女の子が話している。
「…」
それでも私は何も言うことは出来ない。
ただその話を耳にして、そうなんだって思うだけ。
私には関係ないんだから…
「璃乃…」
「大丈夫だよ、悠子。
ありがとう」
心配そうに見つめる悠子に私は精一杯の笑顔を見せる。
「…!!」
お昼休み。私は悠子とジュースを買いに学校内にある自販機へ向かっていた。
その廊下で
「松下ー、木村のこと家に誘ったんだって?」
「流石だわ、可愛いもんなー」
月星と宮野くん、そして月星のクラスの子3人のグループが前からやってくる。
久しぶりに見た月星の顔。
口元にはまだ少しだけ痣の痕が残っていた。
「ははっ、まあなー?
頭も撫でると癖毛がふわふわして気持ちいいのよー」
元気そうな声。
あんまり見たくない聞きたくないと思ってたのに、やっぱり見てしまう。
「…っ」
お互い近付いている途中ふと目が合った。
「目からも俺のこと好きって伝わってくんのがすげえ可愛くてさ」
すれ違ったその時、肩がぶつかりそうなその距離で笑いながら言う彼の言葉が離れない。
目の前が真っ白になった。
倒れそうになる体をぐっと踏ん張って、何も無いように歩く。
どんどん月星から離れていく。
「…悠子ーあたし久々に炭酸でも飲もうかな?!」
そうやって喋ってないと涙が溢れ出てきそうだった。

