それから何も変わったことが起こらないまま数日が経った。
「おはようございます」
「あ、おはよう」
橋本くんとはたまに喋る仲になった。
ぱっと目が合うんだよね、何か。
「普通の生活に戻ったねえ」
「穏やかで良いんじゃないですかー?」
変にドキドキすることもないし、やっと自分らしい生活に戻った。
私には今が合ってる。この前みたいなのは合わなかったんだ。
「あの…芹澤さんと松下くんって何かあったんですか?」
唐突に私と悠子に聞いてくる橋本くん。
「だってこの前まであんなに教室に芹澤さん探しに来てたのに…」
悠子は
"それ以上はあんまり…!"
っていうように首をぶんぶんと横に振っていた。
「…何も無かったよ。何も。
最初から住む世界がいる世界が違ったんだ」
きっと納得はしていないだろうが橋本くんは、そうですか…と折れてくれた。
何も無かった。
周りにはそう思っていてくれた方がいい。
私だってこれからは彼と交わらないところで生きていくんだから。

