「…はは。
何やってんだよ、俺らしくもない」





璃乃がこの部屋を家を去ってから数時間が経つ。

やっとまともに声が出せた。


ずっと、あの言葉が耳を離れない。

'"貴方なんか出会わなければ良かった"


そう言った璃乃の悲しそうな顔。


優しいから本当はあんなこと言いたくなかったんだろう。

きっと本当はあんなこと思ってないはずだ。


なんて、自分に都合のいい考え方でしかない。


少なくとも璃乃にあんな顔させたのは俺だ。俺のせいなんだ。





「…はい」





気付くと怜央に電話をかけていた。





「…月星?どうかした?」





あぁ、いつもの怜央の声だ。

安心する。





「月星?本当に大丈夫か?
何の用だよ」

「怜央、俺はどうかしてるみたいだ。
璃乃を家に呼んで襲って泣かせた」





ちょっと待ってろ!


怜央はそう言うとすぐ電話を切った。


家が近いからすぐ駆けつけてくれるんだろう。


何だ、俺は怜央に来て欲しくて電話したのか…?

情けない。いつから俺はこんな弱い人間になった。





「月星!月星、開けろ!」





ものの10分で怜央は家に来た。





「おい、何があった。
何でお前は泣いてる」





泣いてる…?俺が?


本当だ。服が濡れてる。鼻も目頭もじんじんして視界がぼやけている。





怜央は俺の話を聞き終わって何も言わなかった。

何も言わず傍にいてくれた。





「俺、好きだったんだ。あいつのこと」

「ああ。そうみたいだな」





俺が落ち着くと怜央も自分の家に帰っていった。



他の女とは違って落ちなかった璃乃。

容姿とかそんなん一切関係なく接してくれた璃乃。

俺が…本気で好きになった女。



でも、もう元の関係には戻れないだろう。



なあ、お前には申し訳ないけど


俺はまた前みたいに喋りたい。

笑いかけてほしい。



きっとまだ璃乃のこと、好きでいます…



--Runa:Side End--