「…もう大丈夫。ありがとう」
何とか涙を止めて月星の顔を見る。
「…!!」
さっき切れていた場所が青く痣になりかけている。
殴った右手も全然動かそうとしない。
「本当に大丈夫?!
私のせいで…ごめんなさい」
「んー?」
と口元を触って
「あ、ちょっと腫れてきたかも。
やべぇなー俺の顔が」
冗談も冗談に聞こえない。
だって、ただでさえ整った顔に痣を作らせたなんて…
それに右手だって負傷してたら日常生活に困るだろうし…
「と、とりあえず冷やさないとですよね…どうしよう、どこかで氷とか貰えるのかな…」
頭の中が軽いパニック状態。
学校ならすぐに保健室へ駆け込めば良いんだけど……
「それじゃあさ…
俺ん家で手当てしてよ」
じっと見つめられて目を逸らせられない。
"こんなやつの家に行くなんて危ないよ!"
"でも早く冷やさないともっと悪化しちゃうかもよ?!"
またも私の頭の中で2つの考えが争ってる。
松下月星。学校で1番イケメンでファンクラブまである人気者。
その容姿からか女性の影が途絶えたことはないと聞く。
常に側にはたくさんの女性がいて、私のことだってただの遊びに違いない。
「…分かりました。
手当てが終わればすぐに帰りますから」
私がちゃんと危機感を持てばいい話。
相手は利き手の右手を負傷してるんだから自分を守るくらい出来る。
何かしてきたら、そこではっきりと断ればいい。
だから、ただ手当てをするだけ。
その目的を果たすためだけに行くだけだ。