「璃乃ちゃーん!
さっきはごめんね、この後お昼どう?」
「あっ…はい。
ごめんね、悠子…!」
さっき言ってたこと全部聞こえてたんですよね、良くもまあ相も変わらず笑顔でいられるよ。
早くこの関係を解消したい…!
そんな気持ちを隠して彼と屋上に向かう。
雨は降りそうにないけど晴れてもない、重めの雲が空を覆っている。
「1つ聞いても良い?」
2人とも食べ終わってから真剣な感じで問いかけてくる。
「璃乃ちゃんは俺のこと好きになった?」
来た。この作戦のゴール。そしてこの関係のゴール。
「そ、そんなこと…言わせるんですか?」
ふふふ、なんて笑って頑張って演じる。
もしかしてバレてしまったか?い、いやいやそんなことは…
「んーそっか…
1週間ちょっとかー」
「そんな期間、関係あります?」
あくまで、落ちている設定。
このあと、じゃあもういいや。その言葉を待って悲しむだけ。
「んー1週間ちょっとならー…
璃乃ちゃん、俺にちゅーしてみてよ?」
「へ…?」
いきなりの呈示に言葉を失う。
「だって、俺のこと好きになってくれたんでしょ?
ほら、恥ずかしいなら目つぶっててあげるから…」
そう言って目をつぶった顔が近付いてくる。
どくんどくんどくんどくん…
心臓も体全身が揺れている。
こ、こんなのって…アリ?!
しなきゃ信じてもらえないよね…!?
早くこの関係やめたいし…
こうやって私が考えている間にも、ほらほらと催促してくる。
それでもやはり勇気が出なくて、まず好きでもないこいつにキスなんて…
"ほら!早くしないと変に思われちゃうよ?!"
"ダメダメ!そういうのはお互い好きになってからじゃないと!"
私の中でも討論が行われる。
"あの松下月星とキスできるなんてそうそうないよ!"
"でもでもそんなの不純極まりないよ、芹澤璃乃はそんな子じゃない!"
どうしてもこの場から動けない。