「女の人の夢なんだよね?」





今日の璃乃ちゃんを見て改めて思った。


キラキラ輝いていて、幸せそうに微笑んで。


松下くんも、高校の時と比べて柔らかく笑うようになっていた。





「ウェディングドレス?そうだね。夢だよ。
1番綺麗な姿を好きな人に見てもらえたら…きっと幸せだろうなって」

「着たい?」

「………えっ」





口を伝って出た言葉は耳に入ってきて初めて理解された。


今…僕は何を口走って…?





「………あっ…いや、あの…」

「…ふふっ。
そうだな〜いつかはね!」





結乃は一瞬目を大きく見開いたかと思うと急に吹き出して、そしていつもの結乃に戻っていった。



もし結乃のウェディングドレス姿を隣で見たい…なんて言ったら、素敵な結婚式を見たからそんな風に思うだけだよって笑われるかな。





「…っ!?
どうしたの?」





カフェを出て歩き出した僕は結乃の左手をぎゅっと握って、少しだけこっちに引き寄せた。





「なんとなく?」

「疑問形だし!」





どちらともなく笑いがこぼれて、結乃は繋いだ手をぶんぶんと振り回した。


沈んでいく夕日が世界をオレンジ色に染めていて、それでも飛んでいる鳥や建物は真っ黒で。


まるで2人だけの世界になったような雰囲気を感じた。


握る力を強めれば、隣の君は不思議そうに僕の顔を見つめてくる。



ああ、ちゃんと僕の隣には君がいる。結乃が、いる。



ただそれだけで、ひどく幸せなことのように感じて涙が出そうだった。


……好きだよ。きっとこれからも。



僕を見つけてくれて、ありがとう──



僕たちの物語がずっとずっと続きますように。


--Kota:Side End--