「……寝ちゃった?」
「……」
「幸大は…覚えてないかもしれないけどね?私は助けてくれたあの日からずっと会いたいってお礼が言いたいって思ってたんだよ。
この大学の入試の日、第一希望だったのに筆箱を忘れちゃって絶望に追いやられた私に後ろから声をかけてくれたよね。シャーペンと消しゴムを貸してくれて…幸大がいなかったら私ここにいないよ。本当に本当に感謝してるんだ。まさかまた会えるなんてね…
結局返しそびれちゃったシャーペンと消しゴム…渡したらもしかして私のこと思い出してくれる?なんて。
ありがとね幸大…って起きてる時に言わなきゃ意味ないよね…
今は…おやすみ」
「……」
*
なんだか、夢を見ていたような気がする。
どこかの席に座っていて、前にいた子と話してる夢。多分、大学のどこかの教室で…話していたのは…顔が思い出せない。
一体あれは…?
でも、どうせ夢なんてデタラメの世界。
それ以上思い出そうとすることはやめた。
「…た……こう…た…幸大!」
「……ん?」
「もうすぐ駅に着くよ〜!起きて!」
隣を見れば、よく眠れた?なんて笑顔を見せる結乃がいる。
彼女の笑顔を見ると僕まで笑顔になるのは、それが幸せってことなのだろうか。
前は、僕が笑顔にしたいって思ってた。
でも今は、結乃と一緒に笑顔になりたいって思うんだ。

