「敬語…やめない?」
「え?」
「だって、同い年だし!」
そう言われると。
高校からずっと敬語だったかもしれない。
今までなんとも思わなかったけど…もしかして嫌に気分にさせてた可能性も…
「っ!そうですね…いや、そうだね…?」
「なんで疑問形?」
「ちょっと慣れなくて…」
同い年だとはわかっているものの、どうしてか敬語になってしまう。
「高校の時も敬語だったの?」
「そうなんで…うん、そうなんだ…
学級委員とかやってて」
たとえそれが、あの子と話したいという不純な動機だとしても。
僕は胸を張って委員長を務めたと言える。
それだけの自信があって、そんな自信を持たせてくれたクラスメイトのみんなには感謝しかない。
「へぇ〜!あ、でも似合うかも」
彼女はそう言って両手の指でカメラを形作り、そこから目を覗かせる。
「絵になる!」
「そ、そうかな?」
絵になる、か。
本当にそうならいいな。
僕はちゃんとみんなの委員長になれていたんだろうか。
自分が委員長を務めたことに自信はあっても、周りがどう思ってくれてたのかは不安しかない。
「すっごい真面目そうだけど、本当はすごく優しい委員長!みたいな?」
「はははっ、そうだといいな」
笑う僕を見て、またしても不思議そうに目を丸くした。
「ん?」
「………笑った」
「え?」
急に真面目な顔をして言うもんだから、僕も呆気にとられてしまう。
「ちゃんと笑った顔!初めて見た…!笑った方がいいよ!もっと!」
なんとも思ってなかったけど…ひょっとすると笑顔を忘れていたのかも…
彼女と離れてから、比較的ずっと。
思えば久しぶりにちゃんと笑った気がする。
「…ありがとう」
「え、え、え?なんかお礼言われるようなこと言ったっけ?!」
きっと他の人にはわからない。
僕だけにわかる変化。
それをもたらしてくれたのは、紛れもなく大澤さんだよ。
このことがどれだけ僕の中で大きいことなのか…
過去を断ち切れない、いつまでも囚われたままの僕を救い出してくれるのは彼女かもしれないのだと僕は改めて思った。

