高校を卒業して、僕は志望通りの大学へ進学できた。
新しく始まる環境に胸踊らせながら、でもやっぱり緊張も激しくて。
委員長を経験したせいか、少し内気な部分は治ったけれど初対面ではなかなか話せない。
大学はほとんどの授業で席なんか決められてないから、いつも空いてるところにちょこんと座る。
たまたま隣合った人と話して、息があって、お昼を一緒に食べる仲になって…
ただ、どうしても話すのは男のみ。
女の子とは接点さえあまりない。
…そう思ってたのに。
「橋本くん…だよね?」
ある少人数制の授業で同じクラスの女の子に声をかけられ、名前を覚えてもらっていることに驚いた。
かく言う僕はその子の名前をまだ覚えていなかった。
「大澤 結乃(おおさわ ゆの)です!」
あぁ、彼女にとても名前が似ている。
そう思ってしまうのは、きっとまだ彼女への想いを断ち切れていないからだろうか。
「大澤さん…すみません、まだ覚えてなくて。
それで…どうかしました?」
「ううん、全然いいから気にしないで!」
これから覚えてくれればいいから!
とハキハキした口調で笑う彼女に思わず口を開けてしまう。
大人しい印象だったけど、結構明るい子なんだ…
そんなギャップを感じたから。
「今度ね、発表があるでしょ?
あれさ、全然どうすればいいのかわかんなくて…
橋本くんならわかるかなって思ったんだけど…どう?」
どう…と聞かれても答えはノーだ。
僕だってよくわかってない。
それもそのはず。
高校で発表なんて数えるくらいしかしたことないし、大学となるとレベルも上がる。
「それなら…一緒にやりますか?」

