初めて出会ったのは入学式の日。
「大丈夫?」
そう、声をかけてくれた。
「あ、えっと…教室の場所が…」
「何組?」
「3組です」
「一緒に探そっか」
教室の場所がわからず、まごまごしていた僕を助けてくれた。
名前も聞いてない、聞かれてもいない。
きっと彼女の記憶の中には残っていないだろうなと思う。
ただ、僕は覚えてるんだ。覚えてたんだ。
貴女と同じクラスになったあの日、どれだけ嬉しかったことか。
きっと彼女はそんなこと微塵も感じてないと思ってるけど。
どうしても話す機会がほしくて、委員長になった。
"委員長"として接すれば何も変に感じられない。
それは、僕にとって逃げの道だったのかもしれない。
僕自身ではどうしても近付けなくて。
いつも何か口実がほしくて。
だけど僕のそんな努力でさえ彼は悠々と越えていった。
主役級の逸材。
チャラいけど、キラキラしている。
僕なんて足元にも及ばないくらい。
そして彼女の中で彼を占める割合が増えていった。
どんどんと増えていくそれを、彼女は1度消そうとしたがそんなことはできるわけもなく。
とうとう、彼女の物語でヒーローになったのは彼だった。
ただひとつ言えることとして…
彼女を好きになったこと、そのことに一片の後悔もない。
今でもやっぱり特別な存在に変わりはなくて。
だからこそ幸せになってほしいとそう思う。
ずっとずっと、祈ってる──