思わず両手で口を押さえる。


時が止まったかのような感覚。





「……え…」





喉を伝って出たのは息に混じった一文字だけだった。



どうして、こんな所にいるの?

あの人は誰?



あんなに笑ってる月星を久しぶりに見た気がする。


最初の頃はこんなこと思いもしなかった。


月星と一緒に笑ってるのが私だったらいいのに…なんて。




はっきりとは見えなくても月星の笑った顔と、楽しそうな雰囲気は伝わってくる。


これ以上、この場にはいられなくてなりふり構わずただ走った。


視界がぼやけた。

人にぶつかっても構わず走った。





「り、璃乃!」





後を追いかけてくれる悠子のことも気にせず私は足を止めなかった。





目的なんか何もなく走ってただけなのに、気付くと私は自分の家に帰っていた。


勢いよく自分の部屋に入るとベッドにダイブ。

枕に顔を埋めながら、さっきの光景がフィードバックする。

脳裏に焼き付いて離れない。



そんな中、ふとあるネックレスに目がいく。

月星にもらった指輪を通して作ったネックレス。

なかなか勿体なくてつけられなかったそれを久しぶりに首にかける。


そしてそのまま、私は眠りに落ちてしまった。