本当に行くの…?
戻ろうよ…
何回も言いすぎたら皆の楽しい雰囲気を壊しちゃうよね…
本当は言いたい本音を飲み込んで1歩1歩踏みしめる。
今の目玉アトラクションお化け屋敷は奥の方に位置しているようでそこまで距離がある。
とても長い。もう2時間くらい歩いてるんじゃないかってくらい遠い。
「すげぇ…リアル…」
もう着いてしまったことを月星の一言で感じとる。
周りを見回すと、今まで見ていた景色とがらっと変わって映画の中にいるみたい。
「うわっ」
宮野さんが驚いてるのって初めて見るな…
私も悠子に続いて歩いて行く。
「…?!」
突然悠子の様子が変わる。
頭を抑えてうずくまる。
その視線の先には車と共に頭から血を流した少年が倒れている人形があった。
「ゆ、悠子?!
どうしたの、悠子!」
「ど、どうして…?
…置いていかないで…」
ぶつぶつと独り言をつぶやく。
「悠子?!」
慌てて悠子の肩を揺らす。
私の叫びを聞いた月星と宮野さんが駆けつけてきた。
「どうした?!」
「ゆ、悠子が…」
「大丈夫か?!」
宮野さんが悠子の元へ行くと、ぱっと我に返る悠子。
「あれ、あたし…」
「大丈夫?悠子…
何か変なこと言ってたけど…」
「分からない。頭の中がこう、ぐるぐるして…」
まだ悠子が落ち着く様子は無く、傍にいようと思ったその時
「俺が高梨さんを見とくから2人は行ってきな」
「いやでも…」
「あたしなら大丈夫。ごめんね?
2人で楽しんできて」
悠子にそう言われてしまって、私は月星と顔を見合わせながら
「う、うん…じゃあ行ってくるね?」
「怜央、頼んだぞ?」
「ああ」
後ろ髪を引かれる思いをしながらお化け屋敷に入っていった。

