「あぁーー…良かったね。
ちょっと泣けた…って、え!?」

「な、なんだよ…こっち見んなよ……」





隣にいた月星の頬には涙の跡が見えた。

一筋ではなく幾数も。


確実に私よりも泣いただろうなって感じ。





「そ、そんなに…?!」

「いいだろ…仕方ねぇだろ…!
だから映画なんて見たくなかったんだよ…怜央もそうやって馬鹿にすんだから…」

「ば、馬鹿になんか…!」





どこか子供とのやり取りみたいで。

いつもの月星と違うから私にとっては新鮮で。





「……ふふっ」

「ほら、笑った!!
言ってるそばから馬鹿にすんなよ…」

「馬鹿になんかしてないよ!
ただ何か…可愛いなって」





あ、その顔こそ!馬鹿にしてるでしょ!

うわ、こいつ何言ってんだって顔!





「いいよー悠子に言っちゃうもんねー」

「あ、それはやめろ!
こんなん璃乃と怜央以外に知られてたまるか…」





……え、それって…月星が涙脆いっていうこと私と宮野さんしか知らないの…?


宮野さんと同じくらい私も月星に近付けたってこと…?



何だろう…凄く、凄く嬉しい。



たったこれだけのことなのに宙に浮かびそうなくらい嬉しい…