「悠子ーー
ご報告があります…」

「ん?何だい、聞きましょう」





私は部屋に入るとすぐ悠子に電話した。





「えっと…」

「委員長と何かあった?」





私が口ごもっている内容にも感づいてしまう悠子。


本当によく出来た娘さんですよ…





「…うん、あのね…」





悠子は私が喋っている間、数回相槌を打つ。





「そっかそっか。
んー…璃乃は順調に階段を上って行ってるんだね…」





私が階段?と聞き返すと、悠子はふふと笑って





「自分の力でどんどん前に進んでいってるねってこと。
あたしはダメダメだなぁ…自分で自分がどうしたいのか分からないもん」

「…それって前から言ってた白馬の王子様のこと…?」

「白馬…そんないいものなのかな…」





含みを持たせたように言う悠子に違和感を感じて、一歩踏みよろうとしたけれど





「ごめんね、璃乃!
あたしこれからやることがあって…
本当におめでとうね!」





それは半ば一方的に。



私は相手のいなくなってしまった、ただの電子機器に向かって





「あ、うん。ごめんね?
ありがとう」





と呟くしかなかった。