冷たい、地を這うような声。
その声に涙に濡れる顔をあげると、まっすぐとメイドさんたちを見据えいつもの厳しい無表情で立つジルの姿。



「朝5時半に起床し、朝食を済ませた後みっちり5時間座学。その後昼休憩をはさみダンスレッスンを3時間。そして休憩後夕食をかねてのマナー講習。その後フリータイムに予習復習」

「・・・」

「それを仕事で私が付けない日を除き2週間ほぼ毎日。レッスンがない日も書斎にこもってひたすら勉強。文句も、泣き言も言わず、こちらがとめるのも構わず必死に。それをあなた方ができるのならばぜひ代わっていただきましょうか」

「ジ、ジルさま・・・」





淡々と、話すジルにはとても迫力があって。
私は口をはさむことができない。

メイドさんたちは青ざめた顔で震えあがっているように見えた。



「これまでの2週間、ひな様がこなしてきたことです。ひな様を見下しているあなた方ならたやすくこなせるのでしょうね」

「も、申し訳ございません!あ、あの」

「申し訳ございません、私たちはそんなつもり・・・」

「そんなつもり?では、どんなつもりで仰ったのでしょう。どの身分でそのようなことを言っているのでしょうかね」