完璧執事の甘い罠



「うわ!?」



廊下の角を曲がったところで人と出くわしぶつかった。
勢いよく地面に倒れこみ、走り抜けていた私はそこでようやく止まった。




「・・・って、お前。仮にも姫だろ。廊下を走るな」

「・・・」




聞こえてきた声はノエルのもの。
相変わらずの悪態が、なんだか今は心地がいい。

ノエルは、私を姫扱いしない唯一の人なのかもしれない。
今はすごく、ありがたく思えた。
口は、悪いけど。




「お前、その血・・・!また変な事やらかしたんじゃ」

「違う。私の血じゃないから・・・」

「・・・なんかあったのか?」



眉を寄せ私の顔を覗き込む。
私は俯いたまま唇を噛む。



「ねぇ、ノエルは・・・。私の事を、命がけで護るの?」

「は?なんだよ突然」




怪訝な顔。