完璧執事の甘い罠



それは、それはつまり。
さっきジルがケガを負ったことも、王族である私を護るために当然のことで。
そのことに私が気に病む必要も、心配する必要も、こうして泣く必要もないってことで。



それはつまり。
もし、この先ジルが命を落としたとしても、同様で。
私は気に病むことも泣くことも、悲しむこともする必要なんてないっていう事。



それがたとえ、私を護るためだったとしても。





「・・・じゃあ、いらない」

「はい?」

「じゃあ、護ってなんていらない!もう二度と、私を庇うようなことしないで!」





私は怒鳴ると勢いよく立ち上がり救護室を飛び出した。

だってそんなの、あんまりだ。
誰かが傷ついて、それがたとえ知らない人でも、ましてや知っている人なら尚更、心配するのは当然で。


その上自分のせいだったとしたら尚更で。



それなのに、ジルはそれが必要ないって言う。
私に、心を捨てろって言うの?



だったら・・・。
王族になんてなりたくない。
そんな事を言っても無駄なのなら。



だったら私は、護ってなんていらない。