一度だけ、その水晶を鑑定士の人に見てもらったことがある。
でも、この世界には存在しないものだと言われた。
その人が無知なだけなのだと思ったけれど、詳しい鑑定の結果でも同じことを言われた。
珍しいその水晶を、鑑定士は欲しがったけれど、きっぱりと断った。
お母さんは、これをどこで手に入れたんだろう。
――これは、とてもとても大切なものなの。私の、生きていた証
それはそれは、大切にしていた。
時折それを見ては懐かしそうに笑ったり、時には涙を流していたことも知ってる。
この水晶は、なにを知っているんだろう。
お母さんは、なにかを隠していたのだろうか。
もうそんな事、確かめる余地もない。
もう関係ない。
だって私は、もうこの世界から旅立つのだ。


