「なんのことでしょう。ノエル、自分の仕事に戻った方がいいのでは?今日はありがとうございました。一時の休息がいただけて、ひな様もお喜びでしたから」



それなのに、私はそれに気づかないふりをして。
執事としての立場でそう答えた。





「俺は、こんな結果のためにあいつをダリウスから助けたわけじゃない。お前だってそうじゃないのか!?」

「こんな結果とは?」

「お前、正気か・・・?このままじゃ、あいつ、シーエンにいってしまうんだぞ!」



ノエルが声を荒げる。
それでも私は、いたって冷静にノエルを見る。



「私は、ひな様に紅茶を運ばないといけませんので、もう失礼しますよ」

「おい!そうやってまた自分に嘘つくのか!そんなに、自分の立場が大事かよ!」




背中に、ノエルの声を聴きながら私は立ち止まることなくその場を後にした。
自分の立場・・・か。


ひな様の想いを受け止めると決めた時、自分の立場を捨てる覚悟をした。
それでも、今の現状で私がひな様の側にいられるのは、執事としてしかないのだという事も、同時に思い知った。

そして今。
執事としても、側にいられなくなろうとしている。