「なにか、何か酷いことをされたのではないですか?頰の傷は?」
「大丈夫だよ。頰はまだ腫れて青あざになっているけど、咄嗟に加減されたし」
自分がこんな時でも、ジルは私のことばかり。
本当に仕事熱心すぎるんだから。
ジルの方が重傷なのに。
だから、守ってほしくなんてなかった。
ジルに、傷ついてほしくなかった。
私のせいで負った傷でさえ、こんな風に私を労わるのだから。
「今は、ジルの方が重傷なのだから。私のことなんていいから自分のことだけを考えて」
「私は、私の自業自得なのです。ひな様も守れず、執事として失格・・・」
「馬鹿言わないで。いつだってジルは私のために動いてくれるでしょう?守ってくれてるでしょう?」
そう言うと思ってた。
ジルは自分を責めるだろうと。
「そんな風に、自分のこと悪く言わないで」
「ひなさま・・・」
ジルが、完璧なほど執事でさみしくなる。
それでも、もう、それでいいのだと覚悟を決めて帰ってきたんだ。
私も、姫として接すると。


